No.1-〔大人の……〕

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  それをしばらく眺めたあと、安堵の笑みを浮かべた。 「ここなら見付からねぇだろ……」 倉木は携帯を閉じるとジーンズの右ポケットに電話を仕舞い、次に左ポケットからタバコとライターを取る。 彼がストリート鬼ごっこを始める前に必ず吸う、言わば、げん担ぎなのだ。 体に染み付いたその習慣は、無意識のうちにタバコを口に運んでいた。 海風に消されぬよう、ライターの火を空いた手で覆う。 火を点けて一吸いした時、目の前に作業着を着た男がスッと現れた。 倉木は驚き、慌ててタバコの火を地面に押し消して身を潜めた。 作業着の男はそこで立ち止まり、誰かを探す様に辺りを見渡し始める。 男を警戒し、倉木が身構えた。 間違いない、敵だ……。 だが、男は吸っていたタバコを地面に落とすと靴のかかとで踏み潰し、立ち去っていった。 「……なんだよ」 出鼻を挫かれた倉木は、再びタバコを吸おうした……が、箱の中は不運にも空だった。 「マジかよ、最後の一服が……」 短く切り揃えた髪を掻きむしり、自分の行動に後悔した。 「買いに行く時間もねぇし……」  
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