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そう言って腕時計を見る。
時刻はデジタル表示で[23:29]。
「あと一分か」
倉木は箱を地面に投げ捨てるとタバコの事を頭から消し、鬼ごっこに集中しようと目を閉じる。
……ピーッ。
23時30分きっかりに腕時計のアラームが鳴る。
「始まった……」
倉木はおもむろに立ち上がると、付近の建物や状況を把握し始めた。
「右に工場と倉庫が並んでて、左に小型運搬車が一台だけある狭い駐車場……逃げ切れるかな」
もしもの為に逃走ルートを練ろうと駐車場に目を向けた時、一台の普通車が入り口に現れた。
「もう見つかったのかよ」
倉木がつぶやく。
普通車は小型運搬車の隣に止まり、ヘッドライトが消えると次に助手席のドアが開く。
そこから降りたのは、革のジャケットを着て顔を隠す様に野球帽を深くかぶっている長身の男。
その風貌に倉木は息を呑んだ。
「敵のお出ましだな……」
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