No.1-〔大人の……〕

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  袋のネズミとなった倉木に、ヘッドギアの男が話しかけた。 「久しぶりだな、倉木」 「似瀬浩也……俺と会ったことあったか?」 ヘッドギアの男……似瀬は倉木を睨み付けた。 「今日こそ捕まえる」 似瀬はストリート鬼ごっこチーム「フェイク」のリーダー。 似瀬(にせ)という名字を“偽物”にかけ、=フェイク(偽物)というのがチーム名の由来だ。 手段を選ばない戦い方が彼らの特徴でもあった。 「初対面なのに、挟み撃ちとは手荒いな。だが俺には逃げる手立てがある」 倉木は似瀬を挑戦的に睨み返し、携帯電話を耳にあてる。 「許可してやる。そして逃走ルートだ」 『少し厳しくなりそうだ』 「構うかよ」 倉木にとってその返事は、“お手並み拝見”のつもりだ。 「逃げ切れると思うな」 会話を遮るようにして似瀬が声を上げた。 負けじと倉木も言い返す。 「俺にはコイツがいる……名前は?」 倉木が電話の男に聞く。  
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