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『麻生だ』
「よし、麻生。頼むぞ」
『速やかに運搬車の荷台へ登れ、次に……』
この会話は、帽子の男にも流れていた。
耳に取り付けたイヤホンが通話を受信しているのだ。
それを聞きながら、男は不敵な笑みを浮かべている。
『……以上だ。行け』
「了解だ」
倉木は素早く通話を切る。
そして似瀬を一瞥すると、普通車に向かって走り出した。
反応が遅れた似瀬の遥か横を通り過ぎ、スピードを緩めず車に飛び乗る。
ボンネットから屋根に登り、運搬車の荷台のコンテナへ手を掛けると、勢いをそのままに一気に片足をかける。
コンテナの屋根に上がると、後ろを振り返る。
似瀬は倉木の運動神経に唖然としながらも、自らもボンネットに上がってくるのが見えた。
似瀬がコンテナへ手をかけようと倉木から目を離した瞬間、倉木はコンテナの反対側に飛び降りた。
コンテナに乗ったのは似瀬を寄せ付け、巻くためだったのだ。
顔を上げた似瀬は、姿を消した倉木に困惑する。
「えっ……」
似瀬は巻いたが、まだ二人の追っ手が居るため、このまま逃げきれそうにない。
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