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案の定、運搬車には二人の敵が近付いてきていた。
倉木の姿を確認するやいなや走り出す。
だが倉木は冷静だった。
コンテナの側面にあるスライド式の小さな扉を開け、中に入り込む。
素早くその扉を閉めると、コンテナの床に取り付けられた結合部分点検用のハッチを開け、運搬車の車体に出た。
運搬車が止まっているスペースの真下には、蓋の空いたマンホールがあった。
そこは外からは運搬車で隠れていて見えない。
倉木はハッチを閉めると、マンホールへ滑る様に入り込んだ。
似瀬と二人の仲間は、消えた倉木に唖然としていた。
下水道へ降り立つと、着信履歴から麻生へ電話を掛けた。
「おい、上手くいったぞ!」
『ある情報機関から、リアルタイムで衛生画像を拝借したんだ。そこの港が鮮明に丸見えだ』
あくまでも事も無げに言う麻生。
「でも、普通車が無かったら荷台には上がれなかった」
『臨機応変だ。お前があそこで挟まれ無ければもっと簡単なルートがあった』
「まぁ、とにかく助かった」
息を整えながら、額の汗を拭う。
『……よし次だ。下水道を出るには、そこから右へ20m先の排水溝に行かなければならない。そこから一キロほど下水管を歩き、外に出る。暗くて危険だ。携帯電話の明かりを使った方がいいな』
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