二本脚の猫～我が家の｢コト｣～

コトの一日

最初は家の中、そして外へ出て、日に日に行動範囲を広げ、やがては近所の猫と仲良くしているのを目撃されるほどだった。耳のちぎれるような喧嘩もしたが、自分から喧嘩をふっかけるような猫ではなかった。
我が家の住人になったコトは病院に行き、検査と予防接種の注射もした。
コトの生活サイクルは、朝に家を出て、夜、寝るために帰る。私が家に帰る夜ごろ、門の柱にちょこんと座っていて、私が玄関を開けると横からするりと入っていくのだ。
その姿は泥だらけの時もあれば、なぜか綺麗になっていた時もあった。誰かコトを可愛がってくれる人とその人の家、いわゆる別宅があったに違いない。
コトは本当に大人しかった。犬にも、人間にも、何をされても怒ったのを見た事がない。私が見た中で唯一怒ったのは、鏡に写った自分の姿に対してだけだった。