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自分の躯の『中』に還って来た影泪は、暫く呆気に取られていた。
「ねぇ、流威。あの後…お父様とお母様はどうなったの?」
影泪がエルの記憶を見ていた間、こちらの時間は経っていなかったようだ。
「…禁忌を犯した罰として、お二人別々の場所に監禁されております。フェルイ様に対してはそれ程厳しくはないのですが、シエル様は…。」
流威は、云い難そうにエルから顔を背けた。
我に返った影泪は、意を決して話し掛けてみた。
『貴方、エルって云ったわよね。ちゃんと説明しなさいよ。私をどうするつもり?私の躯を使って何がしたいの?"禁忌"ってどう云う事よ?』
影泪は矢継ぎ早に問い掛けた。
エルと流威は揃って吃驚したような表情を見せた。どうやら、影泪の声は二人に聞こえているらしい。
「あれ?まだ意識あったんだ?完全に閉じ込めたと思ったのに…。良いわ。教えてあげる。あたしは、あたしをこんな状態にした人に復讐するのよ。そして、お父様とお母様を助け出す!三人で倖せに暮らす為に…!」
エルは、うっすら涙を浮かべていた。
だが、影泪には少し引っ掛かる事があった。エルの記憶の最後に感じた『想い』だった。
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