7人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
この街は、表面上では平和そうだが、経済的に苦しい人達になると、『何でもあり』の世界になってきている。
お金に困って人身売買をする者もいる。自分の子供や恋人でも平気で売る人もいるらしい。
それを考えると、私は恵まれているのだろう。
親は凄く優しいし、学校にも普通に通っている。
「ただいま。」
いつものように、影泪(える)が学校から帰って来ると、母親は誰かと電話をしていた。
「ええ、明日です。約束の物、忘れないで下さいね!」
影泪は、電話の邪魔にならないように、静かに自分の部屋へと向かった。
「(明日?何だろう。明日は私の誕生日だけど…。何か驚かそうとしてくれてるのかな?)」
影泪は、密かな期待を抱きながら、制服のボタンを外していた。
制服を着替えて、リビングに下りて行き、母親に先程の電話での会話を訊いてみた。
「さっきの電話、明日がどうのって云ったたけど、明日何かあるの?」
母親は、夕食の用意をしながら、話をはぐらかすように素っ気無く答えた。
「何でもないよ。それより、明日は学校終わったら早く帰って来なさいね。」
影泪は、母の答えに益々期待を膨らませた。
明日は影泪の16歳の誕生日だ。
最初のコメントを投稿しよう!