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「もちろんちゃんとした理由だってある。
倉凪家の借金を全て一ノ瀬財閥が無償で建て替え、ご両親の今後の不自由無い生活保護をしてあげる約束で、俊一くんを養子に迎えることになっているのだ。」
伶次の言う通り、倉凪家には大きな借金がある。
とてもじゃないが17歳のアルバイトで返すには非常に荷が重すぎる額だ。
たしか…8千万くらいだったかと思い出す。
しかしそんなことはどうでもいい。
「それじゃあ……」
俺は借金返済のために売られただけなのかよ……。
と言いたかったが、頭を下げている父と泣いている母を見ると、そんなことは言えなかった。
「では亮佑さん美穂さん、そろそろお時間の方が…………」
伶次が頃合いを見計らって俺の親に確認をとって、ゆっくりと立ち上がる。
それと一緒に綾香もすっと立つ。
「俊一を……お願いします」
「俊ちゃん、ごめんね、ほんとにごめんね」
伶次と綾香は気を遣って先に外に行ってくれたらしく、部屋には父さんと母さんと俺だけが残された。
泣いている両親に何を言えばいいのか分からなかったが、伝えなければいけないことはわかる。
「俺のことは心配しなくても大丈夫だから…………だから、父さん母さん……今までありがとう」
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