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ぼんやりしているうちに、気付けばリムジンは一ノ瀬家の敷地までやってきていた。
改めて見ると、広い庭は隅々まで手が行き届いて、木や草が綺麗に整えられている。
屋敷まで一直線の道を半分ほど進んだところで、由美は急にワタリに話し掛けた。
「ワタリ、私と俊一はここから歩いていくから今すぐ降ろして」
「……由美?」
「かしこまりました。お気をつけて」
由美の命令通り、リムジンはゆっくりと減速して道端に止まった。
ガチャッと勝手に車のドアが開き、外の空気が車内に吹き込む。
「ほらほら俊一、降りて歩くよ」
「ちょ、待て!わかったから押すなって」
背中を押され、半ば強制的に外へと俊一は出された。
ったく……今度は何の思いつきですか由美お嬢様?
先に帰るようワタリに指示を出す由美を見ながら、俊一は疑問に思う。
「家に帰るまでがデートだよ」
遠足かよ。
由美は定位置ともなりつつある俊一の片腕にしがみ付きながら笑顔で言う。
こう何度も同じ女の子から過剰なスキンシップを受けていれば、自然とメンタル面に耐性が付くものなんだな。
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