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「ん?もう俊一は家族なんだから『一ノ瀬』の苗字を使っていいんだぞ」
言われてみればそうだった。
倉凪から一ノ瀬に俺の苗字は変わったんだよな。
「一ノ瀬俊一……か。ずいぶん語呂が悪い気がする」
軽く落ち込みたくなったが、伶次や綾香は気にする様子も見せない。
「何を言う『一』が二つも付いているんだぞ?面白……素晴らしいじゃないか」
「今、面白いって言いかけたよね…………?」
「ナンノコトデスカ?」
平静を装うかのように片言の日本語で伶次は誤魔化してきた。
当然無駄なのだが……
「まぁ、あまり気にするな!とりあえず私のことは……パパ、パピー、ダーリンのどれかで呼んでくれ」
「うん、普通に父さんって呼ぶよ」
パパやパピーなんて使いたくないし、ダーリンなどと呼んだら俺の中の大切な何かが崩れ落ちてしまう気がした。
「俊一くん、私は……ママン、あやたん、あーやの三つから選んでね」
「じゃあ母さんにするよ」
母さんが何か言っていた気がしたが、とりあえずスルーしておこう。
倉凪家の事は簡単に割り切れる問題じゃなかったが、家を出た頃に比べたら俺は少し落ち着いた気がする。
一ノ瀬財閥って堅いイメージがあったけど、この様子だと違うみたい……なのか?
そんなこんなで一ノ瀬夫妻と俺は、ワタリの運転するリムジンに乗って一ノ瀬財閥の屋敷にやってきた。
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