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屋敷の門がゆっくり開かれ、車で中に入ってみると、ざっと100メートル先辺りに明かりの付いた屋敷が見えた。
「財閥って聞くと、屋敷の辺り一帯を買い占めて巨大な庭園でも作るのかと思ってたけど、そうでもないのか……」
暗くて周りはよく見えなかったが俺の予想していた程、財閥の屋敷はバカみたいに広くは無かった。
「無駄に大きくする必要など無いだろ?そんなことをするのは金持ちでも一部の変り者だけだ」
真っすぐ前を向いて、父さんは俺に言う。
「あら、レイちゃんも面白い事を言うわね、私たち女性の体力などを気遣って屋敷の規模を小さくしたんじゃなかったかしら?」
クスリと笑って綾香が茶化すようにしながら父さんに尋ねる。
「むぅ………」
見事に図星だったらしく、父さんは低く唸り声を出すことしか出来ないらしい。
「私……たち?」
そんなことより俺は、母さんの言ったその一言が気になり思わず問いかけていた。
「ええ、私たち夫妻には大切な姉妹がいるのよ。
ごめんね俊一くん、直前まで紹介するの忘れちゃってたわ」
困ったような笑顔で綾香が謝ってきたが、気がつけば俺は見とれていた。
ってか、その笑顔は反則だろ。
どこか悔しさを噛み締めながら俺はそう思った。
「月奈と由美、姉が月奈で妹が由美だ、二人とも可愛いから期待しとけよ」
一ノ瀬月奈(イチノセ ツキナ)と
一ノ瀬由美(イチノセ ユミ)、か……
せめて名前くらいは今のうちに覚えておかないとな。
父さんの言う可愛いという言葉に興味はあったが、人物像を妄想…………もとい、想像するのは後回しにして、姉妹の名を覚えようと俺は続けて問う。
「失礼だけど、今何歳か聞いてもいい……かな?」
女性の年齢を問うのはマナー違反だったが、あまりに歳が離れてるとそれはそれで困るため、俺は父さんに聞いてみた。
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