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「ん?私は41歳だがどうかしたか?」
「いや、父さんじゃない……」
「母さんの年齢が知りたいのね、残念だけど内緒よ」
あぁ、これじゃあ話が進まない……
いや違うな、進んではいるが方向がずれてるのか……
「えっと、月奈さんと由美さんのことなんだけど……」
俊一の言葉を聞いた夫妻は、「ああ、そっちか」と言うような納得の仕方で答えてくれた。
「月奈は19歳で、由美は17歳だったわよね」
「そうなると俊一は由美と同い年だな」
楽しそうに会話する父さんと母さん。
こういう光景は、見ていてとても微笑ましく思う。
やがてリムジンは屋敷の玄関前に止まり、ドアが何もしてないのに自動的に開いた。
たったそれだけで驚いた俺だったが、この程度では驚きは終わらない。
「…………すげぇ」
目の前に建っている屋敷を見た感想はそれしか出てこなかった。
そんな感想どころか、
「俺の靴で、家が汚れたらどうしよう……」
などと真剣に考えてしまう始末である。
さすが貧乏、さすが小心者。
「どうした俊一?」
車から降りたところで立ち止まっていた俺に、父さんが呼びかける。
「な、何でもない!」
まさか「靴の汚れを気にしていたのさっ☆キラッ」、なんて言える訳もなかったから慌てて誤魔化す。
「ほら、入りましょ」
綾香にも促され、玄関前に立つ。
期待と緊張と不安でいっぱいだったが、不思議と体は動いて扉を開けてくれた。
「ただいま……?」
お邪魔しますと言うべきか悩んだが、新たな自分の住まいという意味を込めて俺はそう言った。
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