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高い天井に吊された豪勢なシャンデリア、大理石の床に敷かれた真紅の絨毯、どこかの城のダンスホールみたいな明るい空間が目の前に広がる。
正直言うと、ダンスホールなんて見たことないけどな。
イメージが湧かない人はRPGの王様の城みたいなモノを連想してくれれば上等だろう。
俺が内心一人で呟いていると、階段から一人の女の子が降りてきた。
「父さん母さんお帰りなさ…………あっ!!」
彼女は俺の存在に気付くと同時に、嬉しそうな笑顔を見せて走ってきた。
「えっ!もしかしてこのカッコいい子が養子の弟くん?」
茶髪をポニーテールに縛ったパジャマ姿の彼女は、本人か確認もせずいきなり抱きつく。
「なっ!待っ……て」
恥ずかしがらずに俺の顔に頬擦りしながら、彼女はおもいっきり俺を抱きしめてくる。
正直、こっちが恥ずかしいです。
「月奈、落ち着きなさい、それと私のことはパピーと呼びなさい」
なんか父さんが余計な事を言っていた気がしたが、抱きしめられていて突っ込む余裕が無い。
「………ん、月奈?」
ふいに、さっき聞かされた姉妹の名前を徐々に思い出す。
「そう、私は一ノ瀬月奈、今日からよろしくね、俊一くん!」
遠慮無くキスをしようと迫り来る月奈の顔を全力で押さえ、必死に抵抗する。
その努力もあり、やっとのことで月奈の抱きしめから解放された。
「今俺の名前を……」
まだ俺は自己紹介をしていない。
なのにどうして彼女は俺の名前を知っているのか?
「まさか死神と目の契約を…ってことは寿命も!」
あくまでデスノー〇的な考えしか浮かばない。
自慢じゃないが、俺の顔やスタイルはそれほど悪くないと思っている。
「前もって名前は聞かされてたの、旧姓は倉凪俊一くんでしょ?」
首を縦に振って短く答える。
「弟が出来るっていうから超楽しみだったの、しかも会ってみて驚いたよ。予想外にカッコいいし」
一度は離れてくれた月奈だったが、またしても俺におもいっきり抱きついた。
「月奈、あとでパピーにも抱きついてくれないか?」
どんな父親だよ!アンタは年頃の娘に何を頼んでんだ!
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