1.出会いと別れと一流財閥

11/34

39085人が本棚に入れています
本棚に追加
/522ページ
高い天井に吊された豪勢なシャンデリア、大理石の床に敷かれた真紅の絨毯、どこかの城のダンスホールみたいな明るい空間が目の前に広がる。 正直言うと、ダンスホールなんて見たことないけどな。 イメージが湧かない人はRPGの王様の城みたいなモノを連想してくれれば上等だろう。 俺が内心一人で呟いていると、階段から一人の女の子が降りてきた。 「父さん母さんお帰りなさ…………あっ!!」 彼女は俺の存在に気付くと同時に、嬉しそうな笑顔を見せて走ってきた。 「えっ!もしかしてこのカッコいい子が養子の弟くん?」 茶髪をポニーテールに縛ったパジャマ姿の彼女は、本人か確認もせずいきなり抱きつく。 「なっ!待っ……て」 恥ずかしがらずに俺の顔に頬擦りしながら、彼女はおもいっきり俺を抱きしめてくる。 正直、こっちが恥ずかしいです。 「月奈、落ち着きなさい、それと私のことはパピーと呼びなさい」 なんか父さんが余計な事を言っていた気がしたが、抱きしめられていて突っ込む余裕が無い。 「………ん、月奈?」 ふいに、さっき聞かされた姉妹の名前を徐々に思い出す。 「そう、私は一ノ瀬月奈、今日からよろしくね、俊一くん!」 遠慮無くキスをしようと迫り来る月奈の顔を全力で押さえ、必死に抵抗する。 その努力もあり、やっとのことで月奈の抱きしめから解放された。 「今俺の名前を……」 まだ俺は自己紹介をしていない。 なのにどうして彼女は俺の名前を知っているのか? 「まさか死神と目の契約を…ってことは寿命も!」 あくまでデスノー〇的な考えしか浮かばない。 自慢じゃないが、俺の顔やスタイルはそれほど悪くないと思っている。 「前もって名前は聞かされてたの、旧姓は倉凪俊一くんでしょ?」 首を縦に振って短く答える。 「弟が出来るっていうから超楽しみだったの、しかも会ってみて驚いたよ。予想外にカッコいいし」 一度は離れてくれた月奈だったが、またしても俺におもいっきり抱きついた。 「月奈、あとでパピーにも抱きついてくれないか?」 どんな父親だよ!アンタは年頃の娘に何を頼んでんだ!
/522ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39085人が本棚に入れています
本棚に追加