・プロローグ・

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倉凪家の貧乏レベルはトップクラスだが、そんなの大した問題ではない。 俺には父さんも母さんもいるけど貧乏なのだ。 なぜかって?そりゃあもちろん理由があるさ 「ねぇママ?まだ酒はあるかい?」 「あらあらパパったら、俊一の給料日はまだ先なんだから、あんまり飲んでると無くなっちゃうわよ?」 真っ昼間から清々しい程気持ち良く酔っている父さんに、母さんはにこやかに言う。 狭いアパートの部屋にはワンカップの酒やビール缶、それにおつまみの袋が転がっている。 酔っている父親の近くで、パート募集の雑誌を退屈しのぎに読んでいる母さんがいた。 「それじゃ父さん、母さん、俺はバイトに行ってくるから」 アパートの玄関で靴ひもを結びながら、黙って会話を聞いていた俺はそう言う。 「俊ちゃん、今日はどこなの?」 母に呼び止められ、ドアノブに手を掛けたまま俺は振り向いた。 「すぐそこのファミレスだよ、夜には帰ってくる」 そうやって、いつもと同じ調子で俺は教える。
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