・プロローグ・

3/4
39084人が本棚に入れています
本棚に追加
/522ページ
「あら?じゃあ夕御飯は期待できるわねパパ?」 「ああ俊一、しっかりやってこいよ」 笑顔で両親に見送られ、俺は頷いてアパートから出た。 ここまでで勘のイイ人なら察してくれただろう。 そう、倉凪俊一の両親は無職なのだ。 ついさっき父さんが言っていた、 『しっかりやってこいよ』 の一言も、励ましと言うより…… 『しっかりやって賄いを貰ってこいよ』 という意味である。 そう考え、ガックリと肩を落としながら俺は春風の吹く道を歩く。 ちょっと目立つ金髪を風に揺らし、すぐさま別の考え事をしながらバイト先へ向かう。 「今月はファミレスで約40時間、新聞配達が13回、深夜の道路工事が一週間分、カラオケ店で25………」 俺が超真剣に考えていることは今月の給料である。 はたから見れば金の亡者に見えなくもないが、当の本人は生きることで必死だから気にする暇もない。 「全部でだいたい30万くらいかな?よくやったな俺!」 そんなこんなで金の計算に満足しながら歩いていたら、バイト先のファミレスに着いた。
/522ページ

最初のコメントを投稿しよう!