1.出会いと別れと一流財閥

34/34
39083人が本棚に入れています
本棚に追加
/522ページ
「まぁ、いざとなったら作り直してもらうよ」 「……………」 頼むから、それだけは勘弁して下さい由美お嬢様。 月姉は本当にやりかねないから…… 「見つけたら処分するからな」 俺も無理に意地を張って言い返しては見るものの、すぐさま処分出来るほどの技量を持ち合わせてなどいない。 「……まぁ、俊一が相当嫌がるようならほどほどにしといてあげるけどね」 ほどほどにかよ。 電源を落として戻ってきた由美は、さっそく俺の腕を引っ張って歩きだした。 「ちょ…おい由美、急に引っ張るな!」 「ごめんごめん、ほら、そろそろ朝食の時間だから行こうよ」 急に引っ張られて危うく転びそうになる俺だが、ちょっとは自信のあるバランス感覚で態勢を立て直す。 …………はずだったが、失敗して見事に顔面から転んだ。 「俊一!大丈夫!?」 慌てて心配してしゃがみこむ由美。 当然、わざと意地悪でやったわけではないだろう。 「……………いてぇ…」 コンクリートで整備された地面にうつぶせで倒れたまま、俺は小さくそう呟いた。
/522ページ

最初のコメントを投稿しよう!