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バイトが終わって時計を見てみれば、あっという間に時刻は夜の7時を過ぎていた。
父に頼まれた賄いものもきっちり頂き、俊一は帰路の途中である。
春の暖かさを感じさせる夜の空気を満喫しながら、両親の待つボロいアパートにたどり着いた。
家賃は月に壱万円、そのくせ2DKのお得な物件である。
「ん、何あれ?リムジン?」
ボロいアパートの前には、場違いにも程がある高そうな黒い光沢のあるリムジンが一台。
そして運転席には、デス〇ートのワタリみたいな品のある執事さんがさり気なく乗っていた。
変な知識を無駄にフル回転させて、俺は自分の家のドアを開ける。
リムジンに乗ってた通称ワタリが、こっそり俺を目に焼き付けていた事に、俺は毛ほども気付かなかった。
執事さんに見られていたときの俺は、
「家にリンゴは置いてないよな……」
などと呑気に考えていたのだから……
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