1.出会いと別れと一流財閥

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バイトが終わって時計を見てみれば、あっという間に時刻は夜の7時を過ぎていた。 父に頼まれた賄いものもきっちり頂き、俊一は帰路の途中である。 春の暖かさを感じさせる夜の空気を満喫しながら、両親の待つボロいアパートにたどり着いた。 家賃は月に壱万円、そのくせ2DKのお得な物件である。 「ん、何あれ?リムジン?」 ボロいアパートの前には、場違いにも程がある高そうな黒い光沢のあるリムジンが一台。 そして運転席には、デス〇ートのワタリみたいな品のある執事さんがさり気なく乗っていた。 変な知識を無駄にフル回転させて、俺は自分の家のドアを開ける。 リムジンに乗ってた通称ワタリが、こっそり俺を目に焼き付けていた事に、俺は毛ほども気付かなかった。 執事さんに見られていたときの俺は、 「家にリンゴは置いてないよな……」 などと呑気に考えていたのだから……
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