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「ただいま」
ありきたりな一言だったが、ついいつもの癖で言ってしまう。
「お帰り、俊一くん」
帰ってきた俺に返事を返したのは、父でも母でもなかった。
部屋の中央におかれたちゃぶ台を囲むように座っているのは、父さん、母さん、それと知らない人が二人。
一人はピシッとスーツを着こなしているダンディーなおじさん
もう一人は見るからに優しそうな若奥様……だろうか?
さっき俺に返事を返したのはこの女の人だろう。
何にせよ、珍しく倉凪家に来客がやってきている。
その珍しさを表すと、サマージャンボの一等が当たった位珍しいのだ。
「バイトご苦労、いつまでも玄関に立っていないで入ってきたらどうだ?」
ダンディーなおじさまが不敵な笑みを見せて俺に話し掛ける。
直感でわかった──。
この二人が外に止めてるリムジンの持ち主だ、と。
「はぁ……」
自分の家なのにどうしてだ?
全然落ち着かない。
それでも靴を脱いで、言われた通り家に上がる。
さっきから黙っている両親に視線を巡らせてみれば、目を合わせないようにそっぽを向いているではないか。
「父さん?母さん?」
挙動不審な父と母に、一切の気遣いもなく俺は話し掛ける。
「あ、ああ、お帰り俊一」
これは演技なのか?
あからさまに挙動不審すぎて本心なのかわからなくなってくる。
「俊ちゃん…あのね……」
母さんが非常に困ったように話を切り出した。
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