1.出会いと別れと一流財閥

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「ただいま」 ありきたりな一言だったが、ついいつもの癖で言ってしまう。 「お帰り、俊一くん」 帰ってきた俺に返事を返したのは、父でも母でもなかった。 部屋の中央におかれたちゃぶ台を囲むように座っているのは、父さん、母さん、それと知らない人が二人。 一人はピシッとスーツを着こなしているダンディーなおじさん もう一人は見るからに優しそうな若奥様……だろうか? さっき俺に返事を返したのはこの女の人だろう。 何にせよ、珍しく倉凪家に来客がやってきている。 その珍しさを表すと、サマージャンボの一等が当たった位珍しいのだ。 「バイトご苦労、いつまでも玄関に立っていないで入ってきたらどうだ?」 ダンディーなおじさまが不敵な笑みを見せて俺に話し掛ける。 直感でわかった──。 この二人が外に止めてるリムジンの持ち主だ、と。 「はぁ……」 自分の家なのにどうしてだ? 全然落ち着かない。 それでも靴を脱いで、言われた通り家に上がる。 さっきから黙っている両親に視線を巡らせてみれば、目を合わせないようにそっぽを向いているではないか。 「父さん?母さん?」 挙動不審な父と母に、一切の気遣いもなく俺は話し掛ける。 「あ、ああ、お帰り俊一」 これは演技なのか? あからさまに挙動不審すぎて本心なのかわからなくなってくる。 「俊ちゃん…あのね……」 母さんが非常に困ったように話を切り出した。
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