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「本当は寄りたい。でも今日は亮さん疲れてるだろうし、安静にしてなって。また絶対来るから安心して。」
「誰が心配するかよ!」
真っ赤になって反論して居るのが暗闇でもわかった。
家からの明かりのおかげだ。
「じゃあ、本当に今日はありがとうな。楽しかった。」
「良かった。また行こう、デート。」
「!」
軽いリップ音。
キス、だった。
しかもキッチリ唇へのキス。
不敵に笑う奏の顔がすぐ近くにある。
また触れてしまうくらいに。
「ごちそうさま。」
更に意地が悪い、微笑。
「~~~っ、このバ奏!!!!!」
恥ずかしくて、心臓がバクバクで亮の口からは思わず大きな声が出てしまった。
『お兄ちゃん!?』
家の中から声が。
亮の本当の弟、高井 翼の声だ。
外からの兄の声に驚いたのだろう。
「じゃあね、亮さん。また学校で。」
「早く帰れ!!バーカ!」
奏を見送って、亮は唇に触れた。
実はファーストキス。
それなのにいとも簡単に奪っていったアイツが少し憎らしい。
初デート。
今日という日は…
多分、いや、絶対忘れることのない、かなり重要な思い出になった。
というか、忘れたくない思い出だ。
奏との思い出、
全部忘れたくないけどな。
おかえり、と自分を迎える弟の笑みを見ながら、亮はこっそり心の中で言う。
家からは、夕飯の香りが亮を誘っていた。
END
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