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第三章
-デートの醍醐味-
バスに揺られる事約10分。
結局何処に行くのかわからないままだった。奏は[着いてからのお楽しみ]と勿体ぶって教えてくれない。
到着したのは…大きなサッカースタジアム。
「ここは…」
亮は目を見開いて驚く。
見覚えのある場所だ。
テレビで何度も見たことがある。
そう、ここはJ1で活躍する地元サッカーチームのホームグラウンド。
集まっている人を見ると、公開練習のようだ。
「亮さん、行こう。」
「あ、あぁ!」
子供のように目をキラキラさせてついて来る彼に奏はクスリと笑った。
「っはぁ~!凄かったな!!紅白戦!」
1時間後、亮はスタジアム前で背伸びしながら余韻に浸った。
どうやら大変満足だったらしい。
行われた紅白戦は大いに白熱したものとなり、時間の経過などすぐだ。
「楽しんで貰えて良かった。」
「おぉ!」
そこまで笑顔で答えると、亮の顔が曇る。
「でも俺に合わせて、奏つまんなかったんじゃ…」
「そんな事ないよ。試合だったら好きだからさ。」
サッカーが好きな自分は良いけれど…、と心配する亮だったが、本当になんでもないのか、奏の顔は嘘をついているようには思えない。
「大体俺、亮さんと居られるだけで十分楽しいし。」
サラッと恥ずかしい事を言う恋人にドキッとする。
パシッと奏の肩を叩いた。
「バーカ。」
なんど相手に言っただろうか…この言葉、奏には本当は嬉しかったりする照れ隠しであるとわかっていた。
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