猫の目

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初秋の香りがする地獄の桜坂。 到底、爆走できない俺を坂下のお稲荷さんが笑って見ているような気がした。 帝都の中央から少し外れた所である。 松前市(まさきし)には、まだ古い風景が多く残っていた。 蓮ヶ神社もその一つだ。 稲荷と言えば、炎帝を含め神將たちは、友美が作った強力な封呪(ふうじゅ)の腕輪により、全く顔を出さない。 もっとも、校長を含めた理事会の決定が、腕輪をはめる原因らしいが…。 ギリギリで教室に入ると、ぎこちなく歩くユッキーが挨拶してきた。 ユ:「おはよう!相変わらずだね。夏休みはありがとう。今度なんか奢ったるよ」 夢:「別にいいよ」 ただ、湿布が欲しいかな。 フ:「よう…。夢未がち」 ユ:「おはよう。フィレンツェ」 目の下のくまが二層に見えるほど、徹夜明けの顔をしたフィレンツェ。 そして、爽やかに笑って、こっちに来るのが徹だ。 徹:「寝坊グセは抜けないね?」 夢:「はい。すいませんねぇ」 徹:「怒った?」 徹が困った顔をする。 ユ:「ひねくれただけだよ」 ユッキーがフォローした。
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