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「…で、どうだった?楼主の御返事は…」
座敷に残っていた葉月が身を乗り出して聞いて来た。
葉月は事の内容を知る、大切な友人。
葉月だけは俺の気持ちを知っている。
「……駄目だった。話すらまともに聞いてくれなかったし……」
水揚げは免れなかったよ、と葉月に告げると、「ごめん…」と返ってきた。
「──俺のせいだろ?…あんな事云ってさ、結局桜花を傷付けたよな…俺……」
前髪を掻き上げて頭を抱える葉月に、俺はううんと頭を振った。
「俺がお礼云わなきゃいけないのに。…話してくれて有り難うってさ」
でなければ、俺は一生知らないままで楼主を好きになっていた。
何も知らず、何もなかったら……それが良いと思うかも知れない。
だけど、俺は売られて客を取らなければならない。
(いっそ、楼主に抱いてもらえたら良かったな……)
俺はふとそんな事を思った。
今、楼主がどんな気持ちで有るかなど……俺は知るよしもなかった…。
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