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俺の顔から読み取ったのか、葉月はその紙を俺に手渡した。
「──…桜花…幸福って、独りでは掴めないものなんだよ…」
そう云って葉月は紙を俺の前に置いた。
桜散る
愛し君への思ひ出に
花びら落つる満月の華
紙に書かれていたのはこの短歌だけだった。
葉月を見ると、葉月は俺を見つめていた。
「……これ………」
俺はこの短歌だけで解ってしまった。
「……幸せ…祈るよ…」
そう云って控室を出て行く葉月。
俺は短歌だけの紙を握りしめ、決意を胸に部屋を出た…。
「──…有り難う…」
俺は─────。
中庭の桜の樹の場所へ急いだ。
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