181人が本棚に入れています
本棚に追加
「──そうか…同じ血だけはあるな……」
梳いていた手を離し、楼主は踵を返して去って行く。
(……同じ……血………?)
さらりと云われた楼主の言葉。
そう云えば、葉月から以前云われた事がある。
『桜花ってさ、楼主と雰囲気似てるよねぇ…』
舞の稽古中、腕掛け椅子に座りながら扇を扇(アオ)ぐ葉月にぼそっと云われた。
「……似てる…?」
「──あぁ、俺と香蓉くらいは」
…つまりはどのくらいですか、と問い返したいくらいだったが。
葉月いわく、香蓉が“月下の君”なら自分は“陽下の君”だと云う。
軽く受け流していたものの、楼主本人に云われて気付く。
(もしかしたら葉月は俺と楼主の関係を知っているかも知れない…)
だったら聞くしかない。
楼主の事も聞かなくてはならない……そう。
なんで“俺”なのかと…。
「…」
俺は外に居たのも構わず、葉月の元へ急いだ。
「───葉月っ!」
座敷に着くと、葉月が表へ出る処だった。
「…桜花、具合は…?」
酒に酔ったと云って外に出た俺は、「治った」と一言で返し、葉月を庭の木の陰へと引っ張った。
「おい、桜花どうし…」
「──俺、楼主と似てる…?」
問うた俺の言葉に驚く葉月。
(……やっぱり何か知ってる…)
「……桜花………」
「どうして俺が売られたか…葉月なら知ってるはずだよね……」
疑問詞にしなかったのは“嫌”とは云わせない為。
初会の時、楼主を『京一朗』と名前で呼んでいたくらいだ。
絶対、葉月は知っている。
「…葉月…俺は楼主の何…?」
暫くの沈黙。
そして、沈黙を破ったのは葉月だった。
「桜花…楼主は知ってる…だから云う」
葉月は瞼を閉じて告げた。
「──桜花と楼主は“兄弟”だ…………。」
.
最初のコメントを投稿しよう!