‡真実の訳

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「──そうか…同じ血だけはあるな……」 梳いていた手を離し、楼主は踵を返して去って行く。 (……同じ……血………?) さらりと云われた楼主の言葉。 そう云えば、葉月から以前云われた事がある。 『桜花ってさ、楼主と雰囲気似てるよねぇ…』 舞の稽古中、腕掛け椅子に座りながら扇を扇(アオ)ぐ葉月にぼそっと云われた。 「……似てる…?」 「──あぁ、俺と香蓉くらいは」 …つまりはどのくらいですか、と問い返したいくらいだったが。 葉月いわく、香蓉が“月下の君”なら自分は“陽下の君”だと云う。 軽く受け流していたものの、楼主本人に云われて気付く。 (もしかしたら葉月は俺と楼主の関係を知っているかも知れない…) だったら聞くしかない。 楼主の事も聞かなくてはならない……そう。 なんで“俺”なのかと…。 「…」 俺は外に居たのも構わず、葉月の元へ急いだ。 「───葉月っ!」 座敷に着くと、葉月が表へ出る処だった。 「…桜花、具合は…?」 酒に酔ったと云って外に出た俺は、「治った」と一言で返し、葉月を庭の木の陰へと引っ張った。 「おい、桜花どうし…」 「──俺、楼主と似てる…?」 問うた俺の言葉に驚く葉月。 (……やっぱり何か知ってる…) 「……桜花………」 「どうして俺が売られたか…葉月なら知ってるはずだよね……」 疑問詞にしなかったのは“嫌”とは云わせない為。 初会の時、楼主を『京一朗』と名前で呼んでいたくらいだ。 絶対、葉月は知っている。 「…葉月…俺は楼主の何…?」 暫くの沈黙。 そして、沈黙を破ったのは葉月だった。 「桜花…楼主は知ってる…だから云う」 葉月は瞼を閉じて告げた。 「──桜花と楼主は“兄弟”だ…………。」 .
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