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夕焼けの大通りにて…
「おっさん!今日はあんな素晴らしい画家を紹介してくれてどうもありがとう!帰ったら父さんにも紹介してみるよ!」
夕焼けに染まる大通りを男と一緒に少年が歩いていた。
「どう致しまして、てか、もうおっさんって言うの止めろよ。」
少し呆れた表情で男が少年に言う。
「じゃあおっさんだって俺をクソガキって言うなよ!」
少年が男に叫ぶ。
買い物帰りの親子がちらっと男の方を見た。
「わっ分かったから叫ぶなよ~じゃあお前、名前は?」
男が親子の視線を気にしながら少年に聞いた。
少年は少しビクッとなり、
「……クロ・エドナード、“クロ”でいいよ。」
少し恥ずかしそうに言った。
すると、男は吹き出し、
「アハハハ!白猫好きで“クロ”!?ハハハハ!腹痛て~」
腹を抱えて笑い出した。
少年は顔を真っ赤にして、
「だから嫌なんだよ!バーカ!おっさんこそ何て言う名前だよ!」
男の顔に人差し指をめり込ませて聞いた。
男は、
「“イコア・ソンミーヤ”っていう。」
と名乗った。
しばらく時が止まった。
「マジ?」
クロが男に言う。
男が頷く。
「証拠は…?」
すると、男はリュックから五枚のスケッチを取り出し、クロに見せた。
それは、展覧会で最初にみたあの黒猫の色んな角度からみたスケッチだった。
このスケッチの猫の目も展覧会の猫の目と同じだった。
「後、展覧会の金がいらなかったのが本人だったからだ。美術館の館長に言ったら連れの代金もいらないって言われた。まだ疑うなら明日館長に聞いてみな。」
「いや…もう十分だよ…おっさん……いや、イコア・ソンミーヤ…さん。」
クロが五枚のスケッチを見ながら言った。
「“イコア”でいいよ、俺は毎日この大通りの向こう側の裏通りで黒猫を描いてるから暇だったら来てくれ…クロ」
イコアが照れくさそうに言った。
クロが頷き、
「必ず行くよ。また明日…
“イコア”」
夕日が沈みかけ、辺りは薄暗くなってきた…
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