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人がよく行き交う大通りとは真逆に、大通りの反対側、裏通りはほとんどが日陰で人なんて全く通らないこの場所で、イコア・ソンミーヤは猫のスケッチを描いていた。
ちょうどここは猫の溜まり場らしく猫があちこちにたくさんいた。
「はかどっているかい?若い絵描きさん。」
人が全然通らないこの裏通りで作業中のイコアに老人の男が優しく喋りかけた。
イコアは恥ずかしそうに、
「えぇ、おかげさまで。」
と言った。
「ほぅ、上手いもんだ。ただのスケッチなのに、まるでそこにいるようだ。」
老人がイコアのスケッチを覗き込んで、言った。
「いえ、そんな大したもんじゃないですよ……いや~それにしてもこの街の猫はそれぞれの個性が溢れ出していて実に描きやすいですね。」
イコアはスケッチしていた一匹の黒猫を薄目で眺め、そう言った。
「この街、気に入りましたかな?」
老人が微笑み聞いた。
「そりゃあもう!いい友達も見つけましたし、身は置きませんが、何年かになると思います。三年?いや、もっと永く…」
「そうですか…じゃあ頑張ってね若い絵描きさん。」
そう言って老人は立ち去った。
イコアがスケッチを続けようとすると黒猫は消えていて遠くから仲間に呼ばれそちらに向かっていた。
「あいつも一人じゃないんだな…」
すると、今度は猫達より向こうにクロが走ってやってきた。
「イコア~~チャオ~~!!」
イコアはクロの方向に歩みを進め、猫達の横を通る時、
「互いに、忙しいな…(笑)」
とさっきの黒猫に笑いかけた。
すると黒猫が、
ニャオ!
と返事をした。
「またな。」
ニャオ!
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