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「ああ!やっぱりそれか!その画家聞いた事ないけど…有名なの…?」
少年が入り口に向かって歩く男の横で男を軽く見上げながら聞いた。
男は軽く頭をかき、
「あまり有名ではないな…」
軽く笑いながら少年を軽く見下げながら言った。
「ふーん…じゃあこれからイコアの腕をみてやるよ。この俺が!」
少年と男が展覧会に足を踏み入れる。
「えっ?おっさん金は?」
少年が入り口の受付を見ながら男の袖を掴む。
「あぁ、その事はさっき済ませてきたから気にするな。」
「う…ん…」
男のよくわからない答えにしどろもどろになりながらも無理やり自分を納得させ、展覧会に集中する。
短い一本道を通り抜け、普通の展覧会のようにいくつかの部屋にそれぞれ何枚か作品が飾られていた。
「さて、イコアの腕をみてみるか…」
少年がそういいながら一番右の隅に飾られている作品を見に行った。
男が少し遅れて少年に追いつき、
「どうだい?イコア・ソンミーヤの腕は?」
作品に目を通す少年に聞く。
「……凄え…こんな絵みたこと無い…」
絵は黒猫が綺麗な姿勢でこちらを見ているどこにでもありそうな絵だったが、違う、
「イコア・ソンミーヤの絵は…このシンプルな構成の中にさらに壮大感が溢れている…この黒猫の目、俺に沢山の何かを語りかけてる、粗いタッチなのに綺麗さ純粋さが出ていて、まるで3D、いや、3Dよりはるかに現実味が溢れている。明日には絵の中に何もいなくなってそうな位。イコア・ソンミーヤ…どれだけ猫の事を知り尽くしてんだ…」
「で?イコア・ソンミーヤ、百点満点中何点頂けましたか?」
「……測定不可能。」
それから男と少年はイコア・ソンミーヤ展が終わるまで作品を見続けていた。
展覧会が終わり、外も綺麗な夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。
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