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「あ!お前!」
扉から入って来たのはあのガキだった。なるほど、妹を助けに来た訳か。
「何でお前がここにいるんだよ」
「ここの伯爵の良くない噂を耳にしてな。まあ、放って置いても良かったんだが何となく気になって来てみたんだ。それで、お前の妹はこの中にいるのか?」
「うるさい、お前には関係ないだろ。だいたいオレはお前じゃない!ウィルって名前がちゃんとあるんだよ」
「はぁ?お前、自分で名前が無いとか言ってたくせに」
「その方が何かと都合が良いんだよ」
「なるほどね、それで妹は?」
ウィルはオレに言われたのが気に食わなかったのか、不機嫌な顔をしたが真剣なまなざしで顔を見回している。そして、一人の少女を見つけるとその少女の元へ駆け寄った。
「イル!大丈夫か?兄ちゃんだぞ!」
イルはウィルと同じく金髪で少し長めの髪をしている。どうやら血は繋がってるみたいだな。しかし、いくらウィルが呼びかけてもイルはピアノの下に座り床を見ている。
「お前、嫌われるような事でもしたのか?」
「そんなことするかよ!イル、どうしたんだよ?オレだよ、ウィルだよ」
ウィルの必死の叫びも虚しくイルはただ無言で座っている。
オレはイルの首筋に手をあて脈をとってみた。
「これは……」
「な、なんだよ!イルはどうなってんだ?」
「死んでる」
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