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「……」
「施設がダメとはどういう……」
「施設に行ったら会えなくなっちまう」
「どなたに?」
「妹だ……」
「お前さっき家族はいないって」
「あれは……嘘だ」
どうやら訳ありみたいだな
「なあ!頼む!オレをこの都市の貴族の住居区まで連れて行ってくれよ!」
「理由は?」
「オレは、戦争で親を無くして彷徨っていた時に妹に……イルに会ったんだ。イルも孤児でさ、オレが守らなくちゃって思ったら何か力が出てきて……、それでオレ達は二人で今まで生きてきたんだ」
話しを聞いていたネールが質問する
「では、何故離れ離れに?」
「オレ達がこの都市に来たときに貴族のお偉いさんが来てイルを養子にしたんだ」
「君は養子にしてもらえなかったのですか?」
「男はいらないって言われてさ」
「妹は今幸せなんだろ?」
「え!あ、多分」
「そこにお前が行って何になる?」
「セイル様!!」
「妹の幸せを壊すだけじゃないのか?」
「そんなことあるもんか!イルだってオレに会いたいはずなんだ!」
「会ってどうする?お前が妹を今以上に幸せにできるのか?ただお前が寂しいだけじゃないのか?」
「うるさい!うるさい!うるさい!お前に何が分かるっていうんだ!お前に何が!!」
「おっと、買い残しがあったな。ネール留守番頼むわ、ちょっと出掛けてくる」
オレはそう言って店を出た
「ちくしょう、何なんだよ……」
「すみませんねぇ、でも君のことが心配だからこそセイル様はああ言ってるんですよ」
「でも、オレは妹に会いたいんだ。あいつが今幸せに暮らしているか知りたいんだよ!イルともう一度話しがしたいんだ!」
「……」
「やっぱり、誰も頼りにならねぇ。オレが自分で行かなくちゃ」
少年は椅子から飛び降りると店から飛び出した
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