貴族の勝手

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「卵と牛乳っていうと……、シナーさんのところか。そんなに遠くないよな」 カリムの眉毛がピクッと動く。 「様子を見に行って来る」 カリムはそう言うと席を立ち、外に出て行こうとする。 「待て」 「何か?」 「お前シナーさんの店がどこか分かってんのか?」 「むっ……」 「オレが案内してやる、行くぞ」 オレも席から立ち、店の扉を開けた。すると何かに当たった鈍い感覚と、きゃっ、という声のあとカゴに卵と牛乳瓶を入れたアルフィナがうずくまっているのが見えた。 「あれ、もしかして今当たった?」 「はい……、おでこに」 「大丈夫ですか、アルフィナ様?セイル殿、姫様の顔に傷をつけるとは!」 「違う、今のは完全なる事故だ。オレに非はない」 「いいんですよ、カリム」 アルフィナはそう言うが目は涙目で額は赤くなっている。 「わ、悪かった。大丈夫かアルフィナ?」 「は、はい。お気になさらずに、あとこれ」 アルフィナは卵と牛乳の入ったカゴを渡した。オレは受け取りとりあえず中に入る。
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