貴族の勝手

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「ねぇ、セイルお兄ちゃん」 「ん?」 「最後の言葉ってどういう意味?」 「ああ、森の世の幸多き日をって言葉か?これはエルフが本当に感謝してますよって伝える時に使う決まり文句みたいなもんだ」 「じゃあそう言えばいいのに」 「まあな、でも相手はエルフだ。エルフにはエルフなりの表し方がある。オレ達人間の価値観を押しつけてはいけないんだ。それと、他の種族にもそういう事言ったらいけないぞ、失礼だからな」 オレがそう言うとイルは頷いた。 「でも、母は本当にセイルさんを信じているんですね。その言葉はよほど親しい方にしか使わないんですよ」 「へぇ、そうなのか」 オレは手紙を大事に終うと自分の食器を片付け、スープの仕込みをする。 みんなも食事を終え仕事の準備をし始めた。ウィルとイルは床を掃除し始め、ネールとアルフィナはテーブルを拭いている。カリムも食べ終え、小麦粉でパンを作り始めた。パンの技術だけならカリムには勝てない、練習したわけでもないらしい。なのにオレより上手いのはどうしてだ?
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