貴族の勝手

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「トーストとコーヒーを三つ、遅くても大丈夫だそうですよ」 遅くてもいいっていうのは建て前だろ。アルフィナと同じ空間にいたいだけなんだからな。カリムはアルフィナ目当てで来る客を、良く思っていないが口には出さない。アルフィナが接客を楽しんでいるのに水をさすような事はしたくないらしい。 時間帯が昼に近付くにつれて、客足が多くなる。アルフィナ目当てから、オレの料理を気に入って来てくれる客だ。 客層はあまり大差ないが、若者が多い。故郷を離れてここで働いている者には、優しく懐かしい味だと好評だ。たまにドワーフなんかも来るが、満足して帰って行く。 アルフィナやネール、ウィル達もお客の注文を聞いたり運んだりで忙しい。 「チキンステーキ二つ、パン四つ」 「アップルパイを三つ、魚のムニエルを三つです」 「パスタ二つ、サラダ二つですぞ」 ネール達は注文の書いた紙を厨房に貼り付けて行く。 「カリム、パンを焼いている間に肉を焼いてくれ」 「承知した」 本当に忙しいな、休む間もないぜ。
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