龍の拳と焔の翼

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テンマとアビス=パールの距離はあと一歩で剣が届く間合いに縮まった。 「これで終わりだ、アビス=パール」 テンマはアビス=パールを見据え、剣を両手で力強く握った。 振りかぶった。 「悪霊の守護(オロバス)」 アビス=パールを障壁が覆った。 だが、その時の彼女の表情はどこか諦めたものだった。 「お前の爆弾魔法、参考にさせてもらうぜ!」 テンマの剣から炎が吹き出た。 と思ったらその勢いが鎮まった。 ただし、炎が消えた訳ではなかった。 先程まで炎を吹き出していた剣にその炎が留まっていた。 圧縮されていた。 「絶空刃(ゼックウジン)改め・・・」 その状態でテンマは剣を、 「爆炎斬(バクエンザン)ッ!」 振り下ろした。 障壁に激突した瞬間、剣は、いや剣に纏われた炎が爆発した。 「ダアアアアッ!」 爆風による反動を無視してテンマは剣を押し込んだ。 その勢いは止まることなく障壁を破壊し、そして刃はアビス=パールに、 届き切り裂いた。 炎熱を纏った刃はアビス=パールの刃を容易く切り裂いた様にアビス=パールの体そのものも両断した。 切り口が発火した。 炎は瞬く間にアビス=パールの全身を覆った。 「・・・ハ、ハハハハハハッ!」 炎に呑まれる中、アビス=パールは笑った。 「やはり貴様か、『礎の欠片(ルース)』の○○○よ!」 アビス=パールは笑みと共にテンマと剣を見た。 その時、テンマの表情が揺らいだ。 「そして小娘。まさか貴様が今の『欠片の鍵人(リンカー)』だったとはな。 初めはリュウだと思っていたが・・・」 炎に身を焼かれ消えていくのを意に介さないまま、アビス=パールはアカネを見た。 「テンマ=アケスタ、アカネ=ドラグニル・・・・・また会おう」 アビス=パールの姿が炎で見えなくなった。 炎が消えた。 アビス=パールは消えた。 だが言った、『また会おう』と。 アビス=パールの言葉に戸惑い、二人はその場に少しの間立ち尽くした。 “ドサッ!” 不意にテンマが倒れた。 「テンマ!」 アカネは駆け寄った。 テンマの意識はここで途絶えた。
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