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「上官への無礼、お許し下さい。」
シュラが急に改まり、エルに頭を下げて謝罪した。
「…未熟者が…」
エルはシュラを一瞥して、城の方へと歩いて行った。
シュラはエルの方へと振り返る事はせず、先程エルの立っていた十字架の場所の前に立った。
「…兄さん…」
シュラは一言だけ呟くと、後はただ黙って十字架の前に佇んでいた。
「…シュラ?」
突然シュラの背後から女性の声が聞こえ、シュラはゆっくりと振り返った。
そこには茶髪で茶色の瞳、ショートカットのボーイッシュな女性と、黒髪で身長が高く、がっちりとした厳つい男性が花を持って立っていた。
二人とも、戦闘用の鎧を着ていた。
「…シエル…と、ロイか…」
「おぅ、今ようやく一仕事終えて帰って来たんだよ。」
ロイは疲れた顔をして、ため息をついた。
「…そうか…」
シュラは踵を返して、ロイとシエルの横を歩いて通りすぎようとした。
ガシッ!!
しかし、シエルに肩を捕まれて、引き止められた。
「…何か用か?」
シュラはシエルの方を見ずに、話す。
「…あなた、さっき総司令官に斬りかかったわよね?」
「…だからどうした?」
「だからどうしたですって?
総司令官はあなたの父親でしょ?
父親に刃を向けるってどういう事よ?」
「…シエルには関係の無い話しだ。」
シュラはシエルの手を振り払い、また歩きだした。
「っ?!このっ…!!」
シエルがシュラを追い掛けようとしたが、ロイに引き止められ、諦めた。
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