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「何なの?その子は」
玄関の前、朝一番に俺を迎えに来た凛の声が響いた。
凛の視線が捉えているものは言わずと知れた……俺の赤ちゃん。
いつもならシカトするのだがこの時の俺はテンションが上がりまくっていた。
「ん?昨日拾った」
そう言って背中にいる我が子に親指を向けて、俺は新庄並みに歯を見せて笑った。
うん、キマった!
と、思っていたけど俺のセリフに凛は口をパクパクさせている。
俺に惚れたか?なんて思っていたら凛が声を大きくして怒ってきた。
「なに言ってんのよ?犬や猫じゃないのよ!」
何を言っているんだ、そんな事は見れば分かいる。
「赤ん坊が捨てられてたら普通は拾うだろ?」
とりあえず俺は耳を塞ぎながら優しさしかない言葉で攻めてみた。
「普通は警察よ」
そしたら普通に正論で返された。
うーん、分かっていたけど……手ごわい。
「だ、だって……夜だったし、雨降ってたし」
そんな目に見えての劣勢に俺のハートは既にボロボロだった。
が、そんな俺の目線の先に今の俺には砂漠のオアシス並に価値のあるものが目に入った。
「おっともう学校だぁ。この話はまた今度だな」
俺と凛はクラスが違う、という事は学校に入ってさえしまえば逃げられる。
気が付けば俺は走り出していた。
「ちょっとまだ話しは……」
後ろから聞こえる凛の声は無視して、俺は教室まで走り続けた。
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