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「えっと……人違いじゃないですか?」
自分でも苦しすぎる言い訳だと分かっているけど、俺はそれだけ言うと下を向きながらその場を後にした。
「本城(俺の名字)じゃないか!こんな所でなにしてるんだ?」
しかし奥さんに気付かれて先生に気付かれないはずがない。
自分の嫁が知り合いと話しているから自分も挨拶でもしようとしたのか、ゆっくりと俺たちに近付いてくる先生。
全く……とんだ気の利く旦那さんなんだぜ。
「えっと……」
と、そんな冗談を言っている場合ではない。
今はこのあまりに危険すぎる事態を良い方向に持っていくために、知恵を振り絞ろなくてはいけない。
でもいくら考えても追い込まれている極限状態でナイスな案が出てくる訳も無かった。
う~ん………どうしよ?
「うん?君は隣のクラスの……」
そんな半ば、いや……完全に諦めていた俺をよそに先生は凛を見て眉をしかめる。
その後しばらくは顎に手を当てて探偵とかが何か考える時によくするポーズで何かを考えていた。
そして何か閃いたのかポンッと自分の手を叩いて、次に何だか俺の事をニヤニヤした目で見てくる。
「そういう事だったのか。水くさいじゃないか、本城」
そう言うと先生は俺の肩を一発叩いた。
え?普通あなたの考えているような事が起きていた場合、怒るか心配するところでしょ。
何テンション上げてるんですか、あんたは。
そう思いながらもこの勘違いが果てしなくヤバい事には違いない。
……早々に訂正しないと凜に殺される。
そうして俺が動こうとした時すでに遅し、彼らは無情にも去っていた。
まるでBBQの時に良い感じの二人を残してみんなが腹痛などを訴え、空気を読んでその場を去るみたいな感じに。
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