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「じゃあこれにサインして」
そう言って凛はその紙と一緒にボールペンを俺の前に置いた。
「誓約書?」
その紙にはそう書かれていた。
「そうよ」
俺の戸惑いからの質問に凛はさも当たり前のように胸を張って答えた。
確かに俺なら雄太に愛着がわいて親が見つかっても返さないかもしれない。
だからと言って誓約書って、準備が良すぎ……うん、待てよ?
「お前、まさかこのために!?」
改めて凛の恐ろしさを確認した俺は、更に奴の策略に気付いてしまった。
しかし気付くのが遅すぎた。俺が奴との話し合いに応じた時点で勝負は決まっていた。
「ふふふ、今頃気付いたの?」
悔しがりうなだれる俺を見て凛は高笑いを浮かべていた。
下駄箱で泣いたのも、買い物に付き合ったのも、あの恥ずかしがった素振りも……全てこの為の演技だったのか。
女って、怖いな。
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