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「じゃあそろそろ帰るわね」
雄太の笑顔を見て満足したのか凛はすぐに帰り支度を始めた。
あの訳の分からない紙の事は忘れたようだな。
何て可哀想な記憶力をしているんだ。それとも雄太の魅力か?まぁ、ここはお前の名誉の為にそういう事にしておいてやるよ。
なんて俺は一人で予想から考察までを完成させながら、
「そうか、じゃあ送ってくよ」
口からは最高に優しい言葉を紡いだ。
よし、完璧だ!!これでもう凛の頭の中は俺の優しさでいっぱいのはず。
「あ、ありがとぅ……」
俺の優しさに凛は俺に背を向けて荷物を片付けているのに、後ろから見ても丸分かりなぐらい照れていた。
そんな予想以上の効果に不覚にも俺が逆に恥ずかしくなってしまった。
この時、俺はまた同じ過ちを繰り返していた事に気付いていなかった。
やはり人間とは過ちを繰り返す生き物なんだ、と後で後悔したがこの時はとりあえず、普通に最寄り駅まで歩いていった。
……まるで付き合いたてのカップルみたいな感じで。
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