ラフ・メイカー

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「さよなら。」 そう言って席を立つ彼女。 いや、元彼女。 バタン、と音をたてて閉まるドア。 「(さよなら、か。)」 俺は立ち上がりドアに向かう。 カチャ、リ  鍵を掛ける。 「・・・あれ?」 俺は・・・泣いてる? 「うっ・・・・・うぅ・・」 その涙は止まることを知らなくて、俺はその場に膝をついた。 何だ、俺は、こんなに泣くくらいアイツを愛していたのか。 だが遅い。 アイツはもう帰ってこない。 ドン!ドン!ドン! どれ位泣いたか分からないが、今の顔がやばいことは確かだ。 そんなことお構いなしにドアを叩く奴が居る。 一つ言えるのは、彼女ではない。 彼女はこんな乱暴にドアを叩かない。 とりあえず立ち上がり、声を張る。 「どちら様?」 すると、返答がきた。 男の声だ。 覗き穴で確認する。 『細い』が第一印象の男が立っていた。 「え、いや名乗るほどたいした名前じゃないンですガ。 ワタくシ『ラフ・メイカー』ト呼ばれてます。 えと、アなたに笑顔を持ってきましタ! てかここ寒いから入れてくだサい。」 なんともふざけた返答だ。 つかイントネーションおかしい。 そんなことなどを考えていたら沸々と怒りがわいてきた。 「ラフ・メイカー!?冗談じゃない!!ふざげてんのか!?そんなもん呼んだ覚えはねぇんだよ!俺に構わずに消えてくれ!!」 そこにいられたら泣けないだろう、という本音は何とか抑えた。
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