【32】エピローグ

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「汚汚汚汚汚汚汚汚汚ッ……!」 全身を銀の矢で穿たれ、時王の絶叫が室内に木霊する。 舌にも矢が刺さり、やがて、絶叫は呻き声に変わる。 「ぅ……ぁ……ぁ……」 仰向けに倒れた老兵。 目玉に突き刺さった矢が視力を奪う。 両耳に突き刺さった矢は鼓膜を破る。 手足、腕、腿、腹部、胸部、急所、様々な部位が同時に悲鳴を上げる。 しかし、彼は死なない。 胸部に突き刺さった矢は心臓にまで達している筈であった。 それでも、彼は死なない。 傷口は数多あれど、出血が皆無であった。 「ぬ……お……」 「痛いですよね? でも、安心して下さい、時王。     ・・・・・・・・・・ その矢に殺傷能力はありません」 アルドの宣言に時王は青ざめる。 その言葉が持つ“本当の恐怖”、そして、既に自らの聴力が回復している事がアルドの言葉が真実だと語っていた。
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