【32】エピローグ

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「ぁ……ぁ……!」 床を這って逃げようとする時王。 視力を奪われながらもアルドに背を向けて退避を試みる。 「逃がしませんよ、第二波、発射」 宙に整列する弓に音も無く現れた銀の矢がつがえられる。 アルドが右手を上げると、射手を持たぬ弓から銀の矢が一斉に発射された。 「が……ぁ……ぁ……!」 脳天にまで矢が達して尚、時王の心臓は止まらない。 やがて、銀色の矢は砕け散るが、瞬間的に全身の傷が塞がる。 視力、聴力も即座に回復した。 「前菜ですよ、じっくり味わって下さい。管理者法典七番――【幸せなエータ】」 アルドの足元に銀色の魔陣が展開する。 中央には“η”と刻まれた銀の石版が現れた。 「……!?」 自らの身体が銀色の光に包まれるが、特に異常は現れない。 しかし、何らかの細工を仕掛けられた事は間違いなかった。 「ああ、安心して下さい。 今、この場にいる者は“自殺”が出来なくなる、それだけの事ですから」 一見すると幸せを呼ぶような優しい力。 しかし、見方を変えれば悪魔の所業とも言える。
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