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対戦相手の高校には、埼玉県の西部地区で五本の指に入るほどの良いピッチャーがいた。
『140㎞近く出てるな。』
しかし、新井には止まって見えた。
バットを振りすぎて痛めてたはずの腰が、勝手に回った。
気付いたら二塁ベース付近を走っていた。
センターとレフトが左中間スタンドを見上げている。
ベンチがやけに騒がしい。
『あ、入ったんだ。』
ガッツポーズを繰り返す新井の脳裏には、林田の姿があった。
『林田、お前よく打ったな!あんなに頑張ってたもんな!』
なぜだろう。
結果試合には負けてしまったが、気持はこの空のように晴れていた。
このエピソードが某新聞社にのり、それを目にした林田が何か言いたげな顔で近付き、話しかけてきた。
『新井先輩、新聞みました。とても嬉しいです、本当にありがとうございます。』
『あれはお前が打ったんだよ!お前の力でな。』
と言うつもりが、予想だにしなかった林田の言葉を聞き、照れ臭くて言えなかった。
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