魔王が遺したもの

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お酒が飲めないわけじゃない。 ただ、このお酒は城で飲むものとは確実に違う。 これはおいしくないっ。 こんなお酒をおいしいって飲むペイのほうが、お酒の味をわかっていない。 などということは言えるはずもなく、あたしはジュースをおとなしくいただくことにした。 ペイはセレティさんに笑顔で話しかける。 その顔はすごく甘えたな感じで、そんなペイの相手をしているセレティさんとすごくいい雰囲気で。 彼女? なんて聞けなくて、あたしはおとなしく無言でジュースを飲んでいた。 ペイはあたしに話しかけてはこない。 セレティさんとの会話に夢中になっている。 なんだかムカついてきた。 あたしと親睦を深めるために、ここに誘ったんじゃなかったっけ? 違うの? あたしはムカムカがピークに達して、空になったグラスを置いた。 「ご馳走様でした」 あたしは一言そう言うと、席をたち、店の外へと向かった。 ペイの声は少し聞こえたけれど、追いかけてきてはくれなかった。 あたしは店から出て、少し振り返り、やっぱりペイがきてくれていないことを見ると溜息をついて。 人通りの多い道を歩いていく。 あたりは市場になっていたりして。 初めての町並みを楽しむことにすることにした。 あたしの目にはめずらしいものがたくさんある。 あたしは露店の並べられた装飾品を手にとり、それを眺める。 ペイ…、セレティさんにアクセサリー作ってあげるんだ。 あたしもペイが作ったもの欲しいな…。 なんて思わず考えてしまって、頭を横に振って。 「おや、お嬢さん、目がいいね。いいだろ?それ。うちの息子が作ったんだよ」 露店のおじさんにそう声をかけられ、手にとっていた装飾品をよく眺めてみる。 シンプルなんだけど、すごくきれいだった。 細かい掘り細工。指輪とブレスレットがお揃いになっている。 かわいいかも。これ。 「これください。いくらですか?」 「お嬢さんかわいいからなぁ。じゃあ2つセットにして200Gでいいよ」 「えっ?本当にそんなお値段でいいんですか?すごくきれいなのに」 「いいよ、いいよ。まけといてあげるよ」 おじさんは笑顔で言って、あたしも笑顔になって、いそいそと200Gを払って店を後にした。 宝物にしちゃおう。 あたしは指輪とブレスレットを大切に頬に寄せた。
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