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あの日、ペイと酒場にいってから、あたしは城に閉じ込められてしまった。
いつものように抜け出そうとしたら、ルウォークが見張っている。
どうやらここ最近、あたしが抜け出していることがバレてしまっていたみたいだ。
あたし付きの女官なるものを用意して、あたしのそばにつきっきりにさせたりして。
そんなことで凹むあたしではない。
扉から出られないのなら、バルコニーから出るまでよ。
あたしはバルコニーの扉を開け、外へと出てみる。
下を覗くと…
うっ。高い…。これは落ちたら即死よね…。
いくらあたしでも死ぬのは嫌だ。
そうなるとやっぱり部屋の扉からなのよね。
部屋の前にはあの女官がいるし…。
今日はルウォークが部屋にいないはずなのに。
……。
あたしはしばらく考え込む。
部屋の中を行ったりきたりして。
ペイが待ってくれているような気がして、なんだか焦ってくる。
また『遅いっ』て言って、あたしを迎えてくれるような…。
あたしは部屋の扉を開ける。
「姫様、どうなさいました?」
あたし付きの女官は、いつもあたしの部屋の前に待機させられているようだ。
扉を開けただけで気がつかれた。
「…飲み物が欲しいの。あなた持ってきてくれるわよね?」
「かしこまりました」
女官はあたしに一礼をして、早足で廊下を歩いていく。
あたしは女官が見えなくなると部屋を抜け出して、庭に出て、隠していたレディソードを手にして、走ってあの森へと向かう。
ペイ、いるよね?
まだ待ってくれているよね?
だってあたしはペイの弟子だもんね?
あたしは息を切らして、いつもの場所に辿り着く。
けれど、そこにペイの姿はなかった。
しばらく待ってみても、ペイは来なかった。
同じ方法で次の日も、その次の日も抜け出してみたけれど、ペイがくることはなかった。
会いたかった。すごく。
だけど、あたしはペイの家を知らない。
ペイに会う術を知らなかった。
あたしは剣を抱えて座り込んだ。
会いたいよ…、ペイ…。
あたしの頬をエスナが舐めて慰めてくれた。
あたしはエスナを連れて城へと戻った。
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