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「姫があまりに抜け出されるので、今日から女官をかえさせていただきました」
ルウォークは部屋の扉を開けて入ってくるなり、不機嫌そうに言った。
「メリーと申します。よ、よろしくお願いいたします。姫様」
緊張した面持ちで、ルウォークに連れられてきたメイドは頭を下げる。
「……」
あたしは無言でそれを眺めていた。
だって、もう抜け出すつもりもないし。
ペイは…いないから。
「メリーは姫と同い年です。仲良くなさってください。では私は失礼します」
ルウォークはあたしの無言に額に青筋を立てたまま言い、部屋を出ていった。
残されたメリーは、おどおどとしていた。
あたしはメリーに背を向け、エスナに林檎を食べさせる。
「えっ…と、姫様、あの…」
あたしは声をかけられて、視線だけをメリーに向ける。
メリーはガサゴソとエプロンのポケットを探り、その手に装飾品を出す。
「これ、姫様のものですよね?」
それはあたしが町の露店で買った指輪とブレスレットだった。
あたしは思わずメリーに飛び付き、その指輪とブレスレットを手にする。
あたしがお風呂に入っている間に服が片付けられて、これも一緒になくなっていたのだ。
「姫様にとっては大切なものだったのでしょう?捨てられそうになっていたので、わたしが貰ってきてしまいました。お返しいたしますね」
メリーは少し照れたように言った。
あたしはそんなメリーに飛びつくように抱きつく。
「ありがとう、メリー。すごく探していたの。本当にありがとう。あたし、あなたのこと大好きになっちゃった」
あたしはぎゅうっとメリーを抱きしめる。
「ひ、姫様っ。そんな、恐れ多い…」
「だってメリーは、あたしのことわかってくれるでしょ?この指輪とブレスレットをこんなものって言わないでしょ?」
あたしが聞くと、メリーはあたしに微笑みかけて頷く。
「ええ。姫様にとって大切なものですもの。わたしにとっても大切なものです」
そんなふうにメリーが言ってくれるから、あたしはうれしくてうれしくて。
本当にメリーが大好きになった。
それからは…すぐにメリーと友達になっちゃった。
不思議だけど、メリーにはなんでも話せるような気がした。
今まで、あたし、きっと友達なんていなかったから、すごくうれしかった。
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