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初めての野宿は、知らないメリーのこと、知らないペイのことをいっぱい知った。
ご飯も食べて、あとは眠るだけ。
今日はペイが見張りをしてくれるらしい。
交替でするって言ったのに、ペイはいらないって。
優しさなのか、なんなのかはよくわからない。
森の獣の声を遠くに聞き、薪の爆ぜる音を聞きながら少し眠り、でも慣れない外での睡眠に、あたしは目を覚ました。
目を擦りながら、城ではない、森の中の景色を見る。
夢じゃない。
隣に眠るメリーを少し眺めて、薪のそばに座っているペイに目をやる。
「起きたのか?まだ眠っていてもいいぞ」
ペイはあたしに気がついて、そう声をかけてくれた。
あたしは起き出して、ペイのそばにいって、ちょこんとその隣に座る。
うん。なんとなく、近くにいたかったっていうか。
「…今ならまだ城のほうが近いぞ」
「帰らないよ。あたしは城の外の世界を見たいもん。もっと遠くまで旅をしたい」
あたしは焚火のほうを見つめながら言った。
もっといろんなことを知りたい。
あたしはきっと知らないことばかりだ。
「おまえがいいなら、俺はそれでいいけど」
「…ペイ、迷惑かけることたくさんあるかも知れないけど、おいていかないでね?」
あたしは少し不安になって、ペイのほうを見る。
ペイは焚火のほうを見ていて、その横顔は炎に照らされて、少し赤く映る。
「俺がおいていっても、おまえの側付きの女官の魔法の腕があれば大丈夫だろ」
確かに。
メリーがきっとあたしを守ってくれるだろうけど。
その魔法の腕は、勇者様の妹のもの。
かなりのものだろう。
けど。
「あたしはペイと一緒にいたいんだってば」
言わせないでほしい。
ペイなら、きっと、わかってるでしょ?
ほら。横顔が笑ってる。
ん…?なんかいい雰囲気なんじゃない?
メリーは…………眠ってる。
よし。
「ねぇ、ペイ…」
あたしが気合いを入れ、勇気を持ってペイの気持ちを聞こうとしたとき。
ペイは勢いよく立ち上がり、近くにおいていた剣を手にとり、暗闇の中へと向かって薪を一つ投げた。
近くで獣の鳴き声が聞こえ、低く唸る声が聞こえてくる。
………くそぅっ。
あたしの邪魔をするのは、メリーだけじゃないのねっ。
あぁ。聞きたいのに…。
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