砂漠の民

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シシルを東へ進むと、エリュシオンの国、フィルーダがある。 この国の大地はもともと広い砂漠があったのだけど、魔王の被害から砂漠は更に広がった。 恵みをもたらす大地のほとんどが砂漠で、作物は育たない。 エリュシオンの国をこの目で見るまで、あたしはどこか彼が適当なことを言っているのではないかと思っていた。 昼はひどい砂埃と砂に照り付ける陽射しが強いので、昼に寝て、夜に月明かりの中を進むことになる。 これで魔物なんかがいたら、すごくつらい道のりになっただろう。 夜が明けかけ、あたしたちはテントを張る。 テントといっても、とても簡易なもので、砂に棒を4本突き刺して、そこに太陽を遮るように布を張っただけのようなもの。 だけど、ないよりはかなりマシなのだ。 シシルを抜けるまで、ほとんど眠ることができなかったペイを横にさせて、あたしは見張りになる。 こんな砂漠のど真ん中に獣がいるはずもなく。 こんな砂漠の昼間に賊がうろついているでもなく。 あたしは頭からローブをかぶり、口もとには布を巻いて砂埃が入らないようにして、まるで砂漠の民のような出で立ちである。 しばらく見張りをして、メリーもペイも眠っているから、エスナと少し遊んでみたりして。 エスナはあたしの言葉がわかっているかのように、頷きを見せてくれたりして、話相手がいるみたいで退屈はしない。 エスナもこんな小さな体なのに、魔法を使えることを最近知った。 喉が渇くと、エスナがくるりと宙で体を回転させ、円を描き、そこに魔法をかけて水を集めてくれる。 すっごく鮮やかな魔法。 あたしも魔法が使えないか、メリーに習ってみたけれど、あたしにできるのは回復だけ。 メリーに言わせれば、回復の魔法が使えるのは、シスターだけのはずなんだって。 あたし、修道女じゃないけど使えるよ? 資質の問題なのだそうだ。 あたしには光の魔法の資質というめずらしいものがあるらしい。 よくわかんないけど。 エスナが出してくれた水をもらい、何をするでもなく地平線をただ眺めていると、本物の砂漠の民らしき、コブのある背の高い獣を連れた数人の人たちが横切っていく。 ぼーっとそれを眺めていたら、その中の一人がこっちに近づいてきて、あたしは立ち上がって、その人のところへと向かった。
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