砂漠の民

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砂漠の民と思わしき人は若い男性で、独特の民族衣装のようなものを身に纏っている。 「このような砂漠で野営とは、女性には、おつらいことでしょう。少し南へ下ったところにオアシスがあります。我々が暮らす集落なのですが。よろしければお立ち寄りください」 彼はそう誘ってくれた。 あたしはペイとメリーを起こして、彼と共にオアシスへと向かうことにした。 砂漠の民独特の魔法で、この熱砂の中でも歩けるようにしてくれた。 道中、彼の話を聞いていると、彼はその集落の長の息子なのだそうだ。 名前はナチさん。 しばらく進むと砂漠の中に忽然とオアシスが姿を現す。 茶色ばかりの風景の中に緑。 大地が生きていると感じられる場所だった。 「我々の集落には神、シャグラーラ様がおられます。シャグラーラ様が我々をこの砂漠から守ってくださり、オアシスの加護を与えてくださっていると昔から言われております」 「神…がいるの?住んでいるの?」 「えぇ。オアシスに入ったら挨拶に参りましょう。よそ者を受け入れてはくださらない神ですが…」 ナチさんの視線はペイにいく。 ん? 「いえ。きっと大丈夫でしょう」 ナチさんはすぐにペイから視線をはずした。 んん? なんかあやしい…。 オアシスはあたりの砂漠とは違い、涼しかった。 澄んだ水が広く広がっている。 水浴びをすぐにでもしたい気分だったけど、ナチさんに言われるままに、あたしたちは神様、シャグラーラの元へと連れて行かれた。 神様はどんな姿をしているのだろう? そんなことを考えながら案内された先は、オアシスの中でも広く開けた場所で、その奥まった場所に石か何かで造られたらしい台座があった。 そこに座っていたのは、きらびやかに豪華に着飾った綺麗な女性だった。 「シャグラーラ様、只今戻りました。道中、旅を続ける者に出会い、連れて参りました。少しの滞在の許可をいただきたく思います」 ナチさんは膝をつき、頭を下げ、そうシャグラーラに声をかける。 シャグラーラは大きな羽飾りのついた扇で口元を隠し、こちらを静かに見ている。 シャグラーラのまわりには若い男性が数人いて、シャグラーラにお酒を注いだり、扇で扇いで風を送ったりしていた。 なんとなく、あたしはその神を神とは思えなかった。
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