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「この砂漠の方々は、あまりよそ者のわたしたちをよくは思ってくださっていないようですね。けれど悪い方々ではないような気がいたします」
メリーはあたしの髪を結ってくれながら、メリーが思っていることを語ってくれる。
あたりに視線をうつすと、遠巻きにこちらをめずらしそうに見ている人たち。
「そうね。あたしもそう思う。ねぇ、メリーはあの神様のこと、どう思った?」
「…不思議な方…ですわね。この集落の方々には、とても失礼なことかも知れませんが、神と呼ばれるものがこの世に現れ、人々を導いているのではなく、仕切るなど…わたしには考えられませんわ」
「ペイは大丈夫かな?」
「ペイ様のことですから、ナチ様が懸念なさっていたような失礼なことでもされていそうですけど」
確かに。
シャグラーラを怒らせていそうな気がする。
なんていうか、ペイが女の人のご機嫌をとれるはずがない、なんて、この旅の中で思った。
あたしやメリーのことを気遣ってくれているのはわかるけど、それは決してあからさまなものではないし…。
まぁ、きっと怒らせて嫌われちゃうんじゃない?っていうのが、あたしとメリーの見解である。
ペイがあの人の虜になっちゃう…なんていう心配は決してしていない。
あたしは砂漠の民の服を借りて着て、髪も結ってもらってご満悦だった。
砂漠の民になりきる、みたいな。
ナチさんに食事をご馳走になっているとき、ナチさんは聞いた。
「ペイさんが、もし、このオアシスに残ると言い出したら、お二人はどうなさるのです?」
そんなこと考えられなかった。
「有り得ない…と思う」
あたしは素直に答えた。
有り得ないだろうから、考えられない。
だってあの自由なペイが、この不自由な砂漠に残りたがるなんて…。
「シャグラーラ様はとてもお綺麗な方です。あの方に引き止められればペイさんは、もしかすると…」
「ペイ様に限ってそのようなことは有り得ませんわ」
「ですがっ」
「ナチさんがシャグラーラさんを好きなんでしょ?」
あたしとメリーの言葉に納得できないというように、また言葉を繰り返そうとしたナチさんに、あたしは言った。
ナチさんの顔が赤くなる。
どうやら図星だったらしい。
そのことについて深く問い詰めようとしたとき、外にパラパラと雨が降り出す音が聞こえた。
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